16世紀、フランソワ・ラブレーは、この言葉のフランス語であるテレーム(Thélème)を彼の著名な小説『ガルガンチュワとパンタグリュエル』[9]の中で架空の僧院の名前として使用した[10]。この僧院のたった1つの規則は"fay çe que vouldras" ("Fais ce que tu voudras"、または、 「汝の意志することを行え」または "do that which you want" (英語への逐語訳) )だった。この規則は、18世紀中頃にメドメンハムの僧院の入り口に地獄の火クラブ[11]の信条として彫刻をした[11][12][13][14]フランシス・ダッシュウッドによって復活し、現実世界でも使われた。
マーローのテムズ川上流にあるメドメンハムに、1201年に建てられた点在する居住施設のあるシトー会修道院があり、そこは、18世紀中頃に創設者の聖フランシス・ダッシュウッド(1708-1781:後にラ・ディスペンサー卿となる)から名前を取ったフランシアンと呼ばれる社交クラブの集会所として悪評となった。そのクラブは地獄の火クラブとしてもしられ、ジョン・ウィルクス、バブ・ドディントン他政治的に悪評高いメンバーがいた。そのクラブのモットーは、fay Ce que voudras(汝の意志することを行え)であり、ラブレーのガルガンチュア物語に出てくるテレームの僧院を真似て修道院の入り口に刻まれた[11]。
シュリ・グルデヴ・マヘンドラナスらは、クロウリーはラブレーからセレマの法を蘇らせたと書いている[14][13][16][3]。アレイスター・クロウリーは『セレマの前歴』(The Antecedents of Thelema, 1926)の中で、ラブレーは「マスター・セリオン自身の理解するところとまさしく同じようなセレマの法を本質的に説いており」、さらに「ラブレーの最高傑作には、370年後にアイワスがアンク・アフ・ナ・コンスに啓示するであろう書のことを明確に予見した内容が完全な形で収められている」[44]と書いた。しかし、クロウリーの伝記作家ローレンス・スーテインは以下のように異なる見解を述べている。
クロウリーのセレマの体系は Liber AL vel Legis (エルもしくは法の書)という正式名称をもつ『法の書』に端を発する。それは新婚旅行で妻ローズ・クロウリー(英語版)と訪れたエジプトのカイロで、彼女が口述し書き留められた。この短い本は3つの章で構成され、各章は1904年4月8日、9日、10日の正午から1時間の間に書かれた。クロウリーはアイワスという名の存在の声を筆記したと主張しており、彼は後にこの存在を彼自身の聖守護天使と同一視した[45]。しかしダン・エバンスの分析では、ラブレーだけでなく、フローレンス・ファーが演じた「ハトホルの愛人と黄金の鷹の聖堂」[46]にも類似点がある[47]。
クロウリーは、少なくともその生徒には、瞑想や魔術を通じて得たすべての結果に対して懐疑的な検証を行うように教えた[53]。彼は、状況をすべて書き留めるようにする魔法日記をつける必要性と関連づけた(実践と儀式を参照)[54]。Liber ABA (Magick, Book 4) Part 1 (1912-1913年に書かれた。日本語訳は『神秘主義と魔術』第一部)の中で、クロウリーは有力な宗教家たちのさまざまな教えの類似点を描きながら次の楽観的な見解を示した。
セレマの「魔術」は肉体的・心的・霊的鍛錬のための訓練体系である[58]。クロウリーは魔術を「意志に従って変化を起こすサイエンス(科学、学問、学知)にしてアート(芸術、技術、学芸)である」と定義した[59]。彼は真の意志[60]を発見するための手段として魔術を推奨し、セレマの法の述べるところ、たとえば、星幽界での作業について書いている[61]。クロウリーはその一般過程を Magick, Book 4 の中で説明している。
『義務』(Duty)は、「セレマの法を受け入れる者が順守すべき実際の行為の最重要規則に関する注記」であると説明される[71]。これはクロウリーがA∴A∴のために書いた番号付きの Liber と名の付く書ではなく、特別にOTOのために書かれた文書に挙げられるものである[71]。以下の4つの章がある[72]。
『第二の書:マスター・セリオンのメッセージ』(Liber II: The Message of the Master Therion)では、セレマの法は「汝の意志することを行え―そして他になにもするな」といっそう簡潔に要約されている[73]。著者は「したがってそれは、果てしない不変の永久運動についての概念である。涅槃とは静的なものではなくもっぱら動的なものであり、これは結局同じことになるのだ」と書き、意志の探求は結果に執着することなき弛まざる活動だと述べている。
アメリカでは、マギー・インガルズ(ソロール・ネマ)の著書が、1979年に創設されたホルス=マアト・ロッジという団体とともに「マアト魔術」と呼ばれる潮流を引き起こした。この潮流はクロウリーのセレマの本質的な要素と、ネマの霊界通信文書 Liber Pennae Praenumbra において打ち立てられた、エジプトの女神マアトに基づく体系とを統合したものである。ホルス=マアト・ロッジは、現在のホルスのアイオンと次のマアトのアイオンとを結びつけ、人類の統合された心を覚醒させ、人類が調和を達成することを目指している。
また、他の団体の中にもセレマイトがいる。ネオペイガン団体、全世界の教会(Church of All Worlds)の会長、ラサラ・ファイヤーフォックスはセレマイトであり、性魔術師である。他にも少数派ながら相当数のCAWの会員がセレマイトであることを認めている[74]。
他にもIOT[要曖昧さ回避]やセトの寺院など、セレマから発想や手法を得た幅広い多様な特徴を持つグループが存在する。土星同胞団、鷹とジャッカルのカヴン(the Hawk and Jackal Covens)、セレマ協会などのグループはセレマの法を導入しているが、クロウリーの体系の特定の要素を除外する一方で、他の神秘主義や哲学や宗教の体系を導入している。
他宗教からのコメント
ドイツのヴィースバーデンにある自由カトリック教会の司教フェデリコ・トリィは、そのドイツ語の著書 Thelema — Im Spannungsfeld zwischen Christentum, Logentradition und New Aeon の中で、キリスト教の弁証法的帰結としてセレマを提起した。トリィにとってキリスト教はキリストの共同体として存在しているが、トリィはセレマを世界に対する必然的な個人主義的反応と見ている[83]。
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