『名探偵コナン 絶海の探偵』(めいたんていコナン ぜっかいのプライベート・アイ)は、2013年4月20日に公開された日本のアニメ映画で、劇場版『名探偵コナン』シリーズの17作目にあたる。上映時間は110分。興行収入は36億3000万円[1][2][3][4][5][6][7]。読売テレビ放送開局55周年記念作品。キャッチコピーは、「それ、マズくね!?」「限界突破! 究極のスパイミステリー」「危険すぎる緊急ミッション!標的は日本全土!」。
概説
本作は、前々作『沈黙の15分』以降総監督を務めていた山本泰一郎がアニメシリーズの監督に復帰し[注 1]、静野孔文の初の単独監督作品となった。脚本はテレビドラマ『相棒』や『ATARU』を手がけた櫻井武晴が担当。櫻井がアニメ作品の脚本を担当するのは本作が初である[注 2]。海上自衛隊の新鋭イージス艦を舞台に、偶然居合わせたコナンたちが巨大な陰謀に立ち向かう。劇場版でスパイミステリーをテーマにした作品は初である。なお、劇場版コナン史上初めて自衛隊が登場している。
製作には防衛省と海上自衛隊が全面協力しており、実際のあたご型護衛艦「あたご」をCICに至るまで取材したことで細部まで忠実な描写がなされ、恒例の実写EDでは「あたご」、こんごう型護衛艦「きりしま」、SH-60K哨戒ヘリコプター、舞鶴水中処分隊などが登場した[注 3]。自衛艦旗である十六条旭日旗も再現されているため、劇場版シリーズで唯一韓国で展開されていない作品でもある。
ゲスト声優は、『名探偵コナン』の大ファンである女優の柴咲コウがイージス艦内の女性自衛官・藤井七海役で出演する[9]。また、柴咲は次作『異次元の狙撃手』にて劇場版主題歌を担当している[注 4]。
本作の公開と同日に放送されたテレビアニメ『名探偵コナン』の第694話「消えた老舗の和菓子」[10]は、本作のプレストーリーとなっている。本作以降、劇場公開の直近の日にテレビアニメ『名探偵コナン』のエピソードとしてプレストーリーが放送される形式が恒例となる。
阿笠博士と灰原哀は別行動を取っているため、コナンや少年探偵団とは接触していないが、ダジャレクイズを電話越しで出題している。
本作ではTVシリーズからの初登場キャラクターはいないが、服部平次、遠山和葉、服部平蔵、遠山銀司郎が第14作『天空の難破船』以来3年ぶりに、大滝悟郎が第10作『探偵たちの鎮魂歌』以来7年ぶりに登場。綾小路文麿が第13作『漆黒の追跡者』以来4年ぶりに登場した。また、第1作『時計じかけの摩天楼』から前作『11人目のストライカー』まで全ての劇場版に登場していた白鳥任三郎が初めて登場しない作品でもある。2015年3月7日に小川真司が死去したため、小川が演じる遠山銀司郎が登場する映画は本作が最後になった。また、小山武宏が演じる服部平蔵も本作が最後の登場となった。その後、劇場版第21作『から紅の恋歌』からは銀司郎役をてらそままさきが、平蔵役を山路和弘がそれぞれ担当している。
近年のシリーズ同様、本作も小説版が小学館のジュニア文庫(小学館ジュニアシネマ文庫)から2013年4月18日に発売されている[11]。
防衛省や海上自衛隊が物語に深く関わる性質上[注 5]、映画の最後に「この作品はフィクションであり、実在の人物、団体、国家とは関係ありません。また、実際に起こった事件などを基に制作されたものでもありません。」というテロップを挿入している。また、コナンの劇場版シリーズでは大なり小なり爆弾が爆発するシーンがあるが本作は終始、イージス艦内が舞台のため、そういったシーンも全くなかった。
青山によるコナンを描く上でのルールの一つに「コナンは泣かない」というものがあるが、本作のクライマックスで、「コナンの頬に涙のようなものが伝うシーン」が描かれた。しかし柴咲コウによる「今回、泣いていますよね?」という質問に青山は「実は泣いているわけではないんです」と回答[9]。高山みなみは同カットに対して「あれは涙ではなく、汗です!」と断言し、コナンは蘭の生命力を信じているのでまだ諦めていないという個人の見解を出している。本作で監督を務めた静野孔文も、青山との電話打ち合わせで「このカット切りましょうか?」と自分から伺いを立てていた。しかしこの時の青山の返答は「面白いから入れよう」だったという。このやりとりを契機に「青山先生は名探偵コナンの進化を映画に求めている」と強く感じた静野は、アニメ表現の限界に挑戦する派手なエフェクトやアクションを劇場版コナンに取り入れていく。
本作のエピローグは笑いを誘うものでもシリアスなものでもなく、前述の藤井七海とコナンの別れの挨拶のみという、シンプルなものになっている。そのため、コナン以外のメインキャラクターは全く登場していない。
劇場版シリーズの定番となっているエンディング後の次回作の予告が今作でも放映された。「名探偵コナン」のロゴが浮かび上がり、銃の照準が映し出され、弾丸を狙撃するような3DCGによる映像のあと、次回作の製作および公開が決定したと言う旨の字幕による予告が流れた。のちに次回作は『異次元の狙撃手』であることが発表された。また、公開初日の4月20日の本編上映終了後にはルパン三世とコナンが登場するスペシャル映像が流れ、その後の舞台挨拶で『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』の公開が発表された。
ストーリー
ある日の早朝、京都府の舞鶴湾で巡回中の海上保安官・倉田正明が、自爆用の爆弾を積んだ1隻の不審船を発見する。
同日、舞鶴湾で海上自衛隊によるイージス護衛艦「ほたか」[注 6]の体験航海が開催される。参加者の中には高倍率の抽選を当てたコナン一行も含まれていたが、不審船の騒ぎにより入艦の際の検査が厳しくなり、携帯電話も取り上げられてしまった。井上文忠航海長の案内の下、順調に航海スケジュールをこなしていくほたかだったが、CICでの対空対潜戦闘の訓練が終了する直前に未確認物体が艦へ接近し、艦内は物々しい空気に包まれる。航海長の機転により訓練であるとごまかすことができ、幸い接近物も潮流によって流されてきたただの廃船だったため大きな混乱はなかったが、コナンはこの騒動に疑問を抱く。
その後、前甲板を見学中のコナンは対空対潜戦闘の訓練中に1人で居た少年・雨宮勇気に声をかける。勇気や少年の父親と別れた直後、コナンはイージス艦には乗り組まない女性自衛官[注 7]である藤井七海と遭遇する。藤井にどんな仕事をしているかコナンが尋ねると「乗組員の食事を作っている」と藤井は答えたが、藤井の制服の階級章は1等海佐を示すものであり、幹部自衛官は指揮が職務であり現場での作業を行わないこと、一佐ともなれば海上自衛隊ではイージス艦など大型艦艇の艦長クラスの階級であるため、疑問を持ったコナンは藤井を疑い灰原に女性自衛官の写真を送って、藤井の所属先の調査を依頼する。調査を開始しようとするコナンとそうとは知らずトイレに行こうとするコナンに付き添う蘭は、トイレに行く道を間違え海上自衛官・笹浦洋介の左腕のみが発見された現場に遭遇してしまう。蘭が小五郎の名前を出して捜査への協力を申し出る一方、コナンは大阪の平次に連絡し捜査への協力を頼むが、その直後、外部との連絡が巡回中の海上自衛官に発覚しそうになる。また、海上自衛官の無線機で某国のスパイ・X(エックス)の存在を知る。
平次は、若狭湾の造船場で笹浦の左腕のない溺死体を発見し、首に血ではない赤い塗料が付着しているのに気が付く。そのころ、目暮警部を含む警察官たちも海上保安官らとSH-60K哨戒ヘリコプターでイージス艦に合流して捜査を開始するが、海上自衛隊側は何かを隠している様子だった。その後、マイクロSDの抜かれた被害者の携帯電話が艦内で発見され、笹浦がイージス艦のデータをコピーしていたことが分かる。艦長室で不審な行動をする藤井を見掛けたコナンは、藤井がパソコンに出したデータの一部を入手し、そのデータを衛星電波を介して阿笠博士に送る事で、衛星電波を感知した目暮警部たちを艦長室に呼び出すことに成功する。藤井たち海上自衛官たちは不審な行動を問われ、遂に重い口を開いた。
実は藤井は「ほたか」の正規乗務員ではなく自衛隊情報保全隊所属で、笹浦が関与していた情報漏洩事件を捜査しており、その過程で笹浦の取引相手で体験航海に乗じて「ほたか」に侵入したと推測されるXを逮捕するために「ほたか」に乗艦していた。Xはイージス艦の機密情報を手に入れるため「ほたか」に侵入したと考えられるが、マイクロSDは藤井が持っているのになぜそのことを言わないのかコナンは疑問を抱く。室内の通信機器を調べるために所持品を回収されそうになったコナンは、小五郎に盗聴器を付けてその場を立ち去る。
ヘリで京都府警の綾小路文麿とその部下・車折刑事が合流した。そのころ平次は阿笠博士と合流し、灰原が赤い塗料の鑑定をした結果、赤い塗料は船の塗料として用いられるTBTと分かり、笹浦の胴体は海流によって流されたわけではなかったことも分かる。また、コナンが送ったデータはイージス艦のデータの一部と分かり、そのデータは笹浦がネットのクラウドサービスに1度保存し、その後に携帯のデータカードにコピーしたものであることも分かる。コナンは、なぜ笹浦がイージス艦の情報を民間のクラウドサービスに保存したのか疑問を抱く。
コナンは小五郎に付けた盗聴器で拾った会話から、笹浦が今朝5時半頃日の丸の旗をふっているところを観光船の職員が目撃していたことを知る。また、笹浦がイージス艦のデータを流出させたことが分かった。
対空対潜戦闘の訓練が終了する直前に未確認物体が艦に接近する騒ぎで艦長がCICに来て、艦長室が無人だと推理したコナンは、勇気の父親がXだと気付き、直ちにXに会いに行く。コナンは、Xに船が揺れた時に艦長室に居たことと、雨宮さんと言った時すぐ振り向けなかったことや、勇気の薬は塗り薬ではなく飲み薬であること、そして勇気はアトピーではなく食物アレルギーであることを次々に言い当てXを追い詰める。コナンは、ボール射出ベルトからボールを出そうとするが、小五郎の名刺のせいで転んでしまう。周囲に参加者が居たおかげで殺されずにすんだが、勇気にお父さんが殺されると言われ、Xを追うのを一旦やめる。
勇気を取り返したXは、立ち入り禁止のエリアを2人で歩いている所を蘭に目撃され、更に話し掛けて来た蘭に対し勇気がこの人はスパイだと真実を明かしてしまう。蘭はXと戦うことになって空手で追い詰めるが、Xの卑怯な方法で海に落とされる。そのころ平次と和葉は、関西国際空港で竹川を探しており、和葉は竹川を見付ける事に成功するが拳銃を突き付けられる。
コナンは、ボールを蹴りXに当ててXを無事逮捕、平次もかすり傷こそ負ったものの竹川を逮捕することができた。その後、阿笠博士からの連絡を受けたコナンは、小五郎に麻酔針を撃ち、笹浦を殺したのは倉田であるという推理を披露する。容疑者も捕まって一件落着と思いきや、スパイと戦ってから蘭が消えたことが勇気の証言によって発覚し、Xも蘭を口封じのために海に落としたと自供する。
一行はヘリを出して蘭を探すがなかなか見付からない。日没の5時になると海水の温度が下がるので、タイムリミットはあとわずかと言う時に、コナンは光彦が蘭に渡した電波時計のことを思い出す。光彦に確認すると、電波の受信は午前と午後の5時ちょうどだと言うので、電波探知装置を用意するが反応はない。それでも一行は懸命に捜索を続け、時間が経った頃に電波の感知にようやく成功する[注 8]。ヘリの操縦士は海水の反射で要救助者である蘭が見えないと言う状況に陥るが、蘭は小五郎の金の名刺に反射して光っていると考えたコナンの指示により、無事に蘭を発見することに成功する。
登場人物
レギュラーキャラクター
- 江戸川 コナン(えどがわ コナン)
- 声 - 高山みなみ
- 本作の主人公。本来の姿は「東の高校生探偵」として名を馳せている工藤新一だが、黒ずくめの組織に飲まされた毒薬・APTX4869の副作用で小学生の姿になっている。
- 一連の事件解決に奔走する中、知らない間に蘭が危機に陥っていると聞いて愕然となる。
- 毛利 蘭(もうり らん)
- 声 - 山崎和佳奈
- 本作のヒロイン。新一の幼馴染かつガールフレンドで、新一から想いは伝えられているが、まだ返事はできていない。関東大会で優勝するほどの空手の達人。
- スパイ・X(エックス)との戦いで驚異的な強さを発揮するが、Xの卑劣な戦法で海に落とされ、かつてない命の危機にさらされる事となる。
- 毛利 小五郎(もうり こごろう)
- 声 - 小山力也
- 蘭の父親で「眠りの小五郎」の異名で有名な私立探偵。コナンの保護者。元警視庁捜査一課強行犯係の刑事。
- 劇場版としては第2作『14番目の標的』以来、15年ぶりに眠りの小五郎で推理を披露している。これにより、エンディングで目を覚ますまで蘭が危険に晒されていることにも気づいていない。また、自身の作った金色の名刺が蘭の命を救う事となった。
- 金色の名刺は、本作以降もテレビアニメ版や劇場版などに度々登場する。
- 工藤 新一(くどう しんいち)
- 声 - 山口勝平
- コナンの本来の姿で高校生探偵。
- 回想シーンにおいて、アニメ第1話「ジェットコースター殺人事件」の新一と蘭のトロピカルランドでのデートに新たにシーンが追加され、蘭が迷子になった事が語られており、その時の蘭と新一の会話が、劇中終盤の伏線となる。
- 服部 平次(はっとり へいじ)
- 声 - 堀川りょう
- 「西の高校生探偵」として有名で、新一とは「東の工藤・西の服部」と並び称されるライバルであるが、彼の親友でもある。コナンの正体を新一と知る数少ない人物の1人。
- コナンから連絡を受け、和葉と共に阿笠や灰原と合流して協力する事となる。
- 竹川逮捕直後、和葉に抱きつかれたため赤面した。
- 遠山 和葉(とおやま かずは)
- 声 - 宮村優子
- 平次の幼馴染かつガールフレンド。平次に好意を持っており、その想いを伝えようとしたことはあるが、失敗しており伝えられていない。蘭とも仲が良い。合気道部に所属しており有段者でもある。
- 平次と共にコナンに協力するが、平次と阿笠が電話の相手を「新一」として話しているため、コナンの正体を知らない和葉は新一に協力しているつもりになっている。また、同じく正体は知らないながらも灰原が科学者である事を平次と阿笠から聞かされる。
- 竹川逮捕直後に、号泣しながら平次に抱きついた。
- 灰原 哀(はいばら あい)
- 声 - 林原めぐみ
- 元黒の組織の一員かつAPTX4869の開発者で、コナンの正体を新一と知る数少ない人物の1人。
- 阿笠や平次と共に陰ながらコナンのサポートをする。竹川逮捕直後に和葉が平次を抱きついて号泣した際は耳を塞いだ。
- 阿笠 博士(あがさ ひろし)
- 声 - 緒方賢一
- コナンの正体を新一と知る数少ない人物の1人で、発明家。
- 灰原と共に別行動を取っているため、コナンには協力しつつも探偵団とは接触していない。しかし、ダジャレクイズは電話越しで出題。
- 鈴木 園子(すずき そのこ)
- 声 - 松井菜桜子
- 蘭の同級生で親友。鈴木財閥の令嬢で、蘭や新一とは幼馴染でもある。
- 財閥の令嬢であることを感じさせない気さくでサバサバした性格。終盤では蘭の最大の危機に号泣するが、蘭を救出した際には感涙していた。
- 目暮 十三(めぐれ じゅうぞう)
- 声 - 茶風林
- 警視庁刑事部捜査一課強行犯捜査三係の警部。
- 蘭の危機を知って密かに涙ぐんでいる。
- 吉田 歩美(よしだ あゆみ)、小嶋 元太(こじま げんた)、円谷 光彦(つぶらや みつひこ)
- 声 - 岩居由希子(歩美)、高木渉(元太)、大谷育江(光彦)
- 少年探偵団の3人。
- 蘭の最大の危機に号泣するも、光彦の持参した電波時計が蘭の命を救う事になり、蘭を救出した際は大喜びとなった。
- 高木 渉(たかぎ わたる)
- 声 - 高木渉
- 警視庁捜査一課の刑事で巡査部長。佐藤刑事と両想いの恋愛関係。
- クライマックスで佐藤に思わず抱きつかれて照れてしまう。
- 佐藤 美和子(さとう みわこ)
- 声 - 湯屋敦子
- 警視庁捜査一課の刑事で警部補。格闘技に長けていて洞察力も鋭い。高木刑事と交際中。
- 蘭の最大の危機に遭遇したが、救出成功によって高木に抱きついている。
- 大滝 悟郎(おおたき ごろう)
- 声 - 若本規夫
- 大阪府警捜査一課強行犯捜査係の警部。
- 犯人に目掛けて発砲し、平次と和葉の危機を救う大活躍を見せる。
- 和葉が平次に抱きついているのを見た時は部下と共に、罰の悪そうな顔をしていた。
- 服部 平蔵(はっとり へいぞう)
- 声 - 小山武宏
- 平次の父親で大阪府警本部長。平次を上回る推理力の持ち主。
- 遠山 銀司郎(とおやま ぎんしろう)
- 声 - 小川真司
- 和葉の父親で大阪府警察刑事部長。平蔵とは幼なじみかつ親友で、右腕として信頼を寄せられている。
- 綾小路 文麿(あやのこうじ ふみまろ)
- 声 - 置鮎龍太郎
- 京都府警捜査一課警部。
- 本作との関連で、プレストーリーとして放送されたテレビアニメ694話「消えた老舗の和菓子」にも登場する。
オリジナルキャラクター
- X(エックス)
- 声 - 黒田崇矢
- イージス艦「ほたか」に侵入した某国の工作員。本名・国籍などは一切不明。
- 雨宮勇気の父親と偽って、勇気を連れ体験航海に参加。他者を欺くために紳士的で穏やかな口調を装うが、実際は冷酷で卑劣な性格。自衛官を翻弄するほどの狡猾で頭脳明晰な工作員である。戦闘にも長け、空手の関東大会優勝経験者である蘭をして「強い」と思わしめる実力の持ち主[注 9]。イージス艦内で自衛官を人質に逃亡を試みようとしている。
容疑者
- 立石 由紀夫(たていし ゆきお)
- 声 - 廣田行生
- イージス艦「ほたか」艦長。海上自衛隊一等海佐。
- 日本の国防を担うための正義感と統括力を兼ね備えた有能な艦長。謎の不審船の襲来にも冷静に対応し、事態の悪化を防いだ。
- 当初は警視庁や海上保安庁を事件に関わらせることについて及び腰だったが、小五郎に説得された後は、警視庁・海上保安庁・海上自衛隊の大規模な三面体制の捜査を容認する。また、CIC本部から責任者として自衛官に指示を与える。コナンは変声機で立石艦長の声を借り藤井一等海佐を艦長室から追い出し、情報を入手している。
- 藤井 七海(ふじい ななみ)
- 声 - 柴咲コウ
- 本作のキーパーソン。自衛隊情報保全隊所属。海上自衛隊一等海佐。
- ミステリアスな雰囲気を漂わせる美女で、イージス艦「ほたか」に乗艦する唯一の女性自衛官。イージス艦における女性隊員の乗艦は前例がなかったため[注 10]、コナンに怪しまれて質問された際、女性隊員も任務に参加するための計画の一環であり、担当は料理係だと答えるが、艦長室で証言の矛盾をコナンに指摘され、笹浦一等海尉の情報漏洩事件に関する工作員の捜査のために乗艦したと明かした。「X」との戦闘に備えH&K USP拳銃を携帯している[注 11]。自衛官としての使命感から警察官や探偵を信用していなかったが、小五郎から「Xを逮捕する事すら出来ない」と諭される。
- 優れた洞察力の持ち主で、コナンの真の推理力を見抜き、その素性を疑問視する[注 12]。
- 井上 文忠(いのうえ ふみただ)
- 声 - 幸野善之
- イージス艦「ほたか」航海科航海長。海上自衛隊三等海佐。
- コナン達が乗艦しているイージス艦「ほたか」の案内役を務めており、見学コースを説明していた。どんな有事にも対応し、寝惚けた小五郎にもジョークを返すユーモアのセンスも持ち合わせている。
- 不審船騒動では、訓練の一環とその場を収め、見学者に悟られないようイベントを再開させる。雨宮勇気をCIC本部へ連れて行く途中「X」に気絶させられるが、後にメガネをかけて、再びCICに現れる。
- 関口 誠(せきぐち まこと)
- 声 - 成田剣
- イージス艦「ほたか」警務官。海上自衛隊一等海尉。
- 自衛隊の中の警察と言われる警務官で、小五郎らと捜査を開始する。スパイ容疑で笹浦一等海尉を調査しており、今回のスキャンダルが外部に漏れる危険から、部外者の参加には反対しており、警視庁と海上保安庁からの情報提供の要請に対して当初は難色を示していたが、小五郎の「日本のため」と言う言葉に説得されて大規模捜査に協力する。
- なお、普段は護衛艦に警務官は常駐しない。
- 笹浦 洋介(ささうら ようすけ)
- 声 - 水内清光
- 若狭地方隊情報官。海上自衛隊一等海尉。
- 海上自衛隊の幹部だが、某国の工作員にイージス艦のデータを売り渡そうと画策していた。そのため、クラウドに保存されたデータを携帯電話でコピーして、マイクロSDで持ち歩いていた。調査の結果、笹浦が旗を振って何かを伝えていたことが明らかになる。その後、造船所で左腕を失った溺死体となって発見される。捜査中の平次は首に付着していた赤い塗料から推理していくこととなる。また、笹浦の左腕はイージス艦に吸い込まれており、自衛官らに発見される。
- 倉田 正明(くらた まさあき)
- 声 - 松風雅也
- 海上保安庁・若狭海上保安部警備課[注 13]所属の海上保安官。階級章から三等海上保安正だと思われる。
- 舞鶴港近辺の警備を担当している保安官。拳銃と警棒を所持しているため、彼が動くとカチャカチャと言うような独特の音が鳴る。舞鶴港に停泊している不審船を発見して調査した結果、日本にはない機材と爆弾が発見され、若狭保安部に連絡した。その関係から海上保安庁の代表として、警視庁のメンバーと共にイージス艦に乗り込んだ。当初はスキャンダルがらみで海上自衛隊が情報提供を拒んでいたため口論となるが、小五郎の説得で捜査可能となり、安堵の表情を浮かべる。
体験航海の参加者
- 雨宮 勇気(あまみや ゆうき)
- 声 - 三田ゆう子
- 小学生。名前の「勇気」は、勇気のある子に育ってほしい父親からの願いで付けられた。アレルギー体質のため錠剤を持ち歩いている。
- 体験航海に親子で参加していたが、謎の不審船を破壊して騒動になっていた際に、1人で怯えていたのでコナンに声を掛けられた。最初はスパイ「X」に脅されて真実を言えないでいたが、コナンの言葉に奮い立たされ、「X」の正体が自身の父親だと偽っている人物である事を蘭に告発した。EDではその勇気ある行動を称えられ、自分に力をくれたコナンと敬礼を交わした。
イージス艦「ほたか」
- 副長
- 声 - 梅津秀行
- イージス艦「ほたか」船務科の船務長兼副艦長。海上自衛隊二等海佐。
- 各種レーダーの運用・無線通信を担当する船務科のトップで、副艦長も兼務する。味方に属さない潜水物が接近してきた際に、艦長から艦橋を一任されたため、CICから来る操艦の指示を各所に伝達する。
- 佐久間 重吾(さくま じゅうご)
- 声 - 麻生敬太郎
- イージス艦「ほたか」砲雷科の砲雷長兼戦術行動士官。海上自衛隊三等海佐。
- 武器などの運用を担当する砲雷科のトップで、CICの実質的な責任者。有事の際は攻撃命令を発令、平時では艦内警備の指揮を執り、CICから艦長の補佐をする。
- 野津原 将(のづはら まさし)
- 声 - 三戸耕三
- イージス艦「ほたか」CIC勤務、船務科の船務士・電測員。海上自衛隊三等海尉。
- CICの他の隊員より少し太っており、中央にある対水上レーダーを担当する。目標までの距離と目標の位置の正確な座標を報告する。
- 岸 大和(きし やまと)
- 声 - 津久井教生
- イージス艦「ほたか」CIC勤務、船務科の船務士・電測員。海上自衛隊二等海尉。
- 眼鏡をしており、野津原と共に対水上レーダーを担当している。
- 丸山 一(まるやま はじめ)
- 声 - 松本大
- イージス艦「ほたか」CIC勤務、船務科の通信士。海上自衛隊二等海尉。
- 全艦放送で各員に指示を伝える他、舞鶴基地やSH-60Kとの通信も行っている。
- 的場 章(まとば あきら)
- 声 - 鳥海勝美
- イージス艦「ほたか」CIC勤務、船務科の船務士・電測員。海上自衛隊三等海尉。ソナーを担当し、味方に属さない潜水物を探知する。
- 味谷 勇作(あじたに ゆうさく)
- 声 - 土田大
- イージス艦「ほたか」CIC勤務、船務科の船務士・電測員。海上自衛隊三等海尉。
- 電波探知装置を担当し、艦内から発せられた衛星電波を探知したと艦長に報告する。また、送られてきた監視カメラの映像を解析して、竹川を見つけ出している。
- 畑 宗徳(はた むねのり)
- 声 - 西前忠久
- イージス艦「ほたか」CIC勤務。船務科の船務士・電測員。海上自衛隊三等海尉。
- 命令を受け、接近する味方に属さない潜水物に対して発光信号弾の発射を行う。
- 我孫子 勇治(あびこ ゆうじ)
- 声 - 毛利ケンイチ
- イージス艦「ほたか」体験航海中の艦内警備担当、砲雷科の運用員。海上自衛隊三等海尉。
- 渡辺三尉と衛星電波が探知された場所を調査するため、特別許可でニューナンブM60拳銃[注 14]を携帯。その後、艦長室に発信源を検知する探波機を持ってくる。
- 渡辺 隼人(わたなべ はやと)
- 声 - 鈴木清信
- イージス艦「ほたか」体験航海中の艦内警備担当、砲雷科の運用員。海上自衛隊三等海尉。
- 我孫子三尉と共にニューナンブM60拳銃を携帯して衛星電波の調査に当たる。その後、発信現場に突入するが、コナンは電波を切って発見されるのを回避している。
- 沢村 啓太(さわむら けいた)
- 声 - 蓮池龍三
- イージス艦「ほたか」機関科の機関士。海上自衛隊三等海尉。
- 機関整備担当で、幹部自衛官で最初に事件を知る。立ち入り禁止エリアに来たコナンらを戻そうとするも、蘭に説得され、事件と小五郎の存在を艦長に報告した。
- 宗川 勉(むねかわ つとむ)
- 声 - 天田益男
- 海上保安庁・若狭海上保安部刑事課[注 13]所属の海上保安官。
- 倉田正明の上官で、階級章から、一等海上保安正か三等海上保安監だと思われる[14]。倉田と共に「ほたか」に乗船して事件の調査に当たる。
- 電子音声
- 声 - 甲斐田裕子
- イージス艦「ほたか」に設置されている電子音声。
- 艦内状況を報告する役割を担っている。
その他のキャラクター
- 竹川(たけかわ)
- 声 - 宗矢樹頼
- 潜入中の某国工作員。
- 休眠会社を利用するも、和葉から慌てて逃走したりと詰めの甘い行動が目立った。サイレンサー付きのベレッタ 92拳銃を携帯する。
- 車折(くるまざき)
- 声 - 沢木郁也
- 京都府警捜査一課刑事。綾小路警部の部下でイージス艦にも随行。
- 本作のプレストーリーであるテレビアニメ「消えた老舗の和菓子」[10]にも登場した。
スタッフ
音楽
主題歌
- 斉藤和義「ワンモアタイム」[15]
- 作詞・作曲・編曲 - 斉藤和義
サウンドトラック
収録曲
- 胎動
- 神のクイズ
- 水面
- ゆけゆけイージス艦1
- のんびり船
- 名探偵コナン メイン・テーマ (絶海の探偵ヴァージョン)
- Spy Ship
- 船上サスペンスA
- 廃棄船
- アクセント1
- ゆけゆけイージス艦2
- ブルーな疑惑
- 小五郎の名刺
- キラリ1
- ツーショット1
- 対立1
- 船上サスペンスB
- ゆるやかな波1
- 展開A
- アクセント2
- 展開B
- ルックアラウンド
- ツーショット2
- 展開C
- 波紋
- 船上サスペンスC
- アクセント3
- 甘い疑惑
- 展開D
- チェーンウェイブ
- 対立2
- 融合
- アクセント4
- 展開E
- 不審船
- 船上サスペンスD
- キラリ2
- 船上サスペンスE
- 夜の海A~展開F
- アクセント5
- 幼いとまどい
- 船上サスペンスF
- コンカン
- 夜の海B
- 船上サスペンスG
- 決意
- クライシス1
- クライシス2
- アクセント6
- アクセント7
- エスケイプ
- 船上サスペンスH
- キリキリ舞い
- 船上サスペンスI
- 迷いの海
- 海上推理
- 展開G
- ザ推理ショー
- 船上サスペンスJ
- アクセント8
- アクセント9
- ゆるやかな波2
- 落着
- ありえない出来事
- 波切るイージス艦
- 悲しい予測
- 海の境界
- 集中
- トゥギャザー
- 回転木馬
- 海に叫ぶ
- 細い糸
- ありがとう
- ケースクローズド
- アイリス
映像ソフト
- DVD - 2013年11月27日発売(初回生産限定盤・同日発売)[16]
- BD - 2013年11月27日発売(初回生産限定盤・同日発売)[17]
プロモーション
2013年3月より、SCRAP主催の参加型ゲームイベントとして人気を博するリアル脱出ゲームとのコラボイベントが開催された。本作以降、当コラボイベントは毎年実施されるようになった。
セブン-イレブンとのキャンペーン・タイアップでは、新規のアニメーションによるテレビCMが制作・放送された。
2013年4月6日と4月13日のテレビアニメでは、今作の題材である『船』にちなみ「豪華客船連続殺人事件(前編・後編)」がデジタルリマスターで放送された[18][19]。
2013年4月9日には、海上自衛隊の協力で護衛艦「さみだれ」上でヒット祈願セレモニーが行われた[20]。
2013年4月11日からは、公開記念特番「容疑者・柴咲コウとイージス艦の秘密に迫る!!」が各局で随時放送された[21]。
興行成績
全国344スクリーンで公開され、2013年4月20日と21日の初日2日間で観客動員数56万5,914人、興行収入6億7,154万8,700円となり、これは最終興行収入32億9,000万円の前作『11人目のストライカー』との初動興行収入の対比で100.6%に及び、興行通信社の調査による映画観客動員ランキングでは初登場第1位となった[22][23][24][25]。また、ぴあの調査による初日満足度ランキングでは、91.6ポイントを獲得して第1位となった[26]。
その後も4週連続で第1位を記録し[27]、4週連続で第1位・9週連続トップ10はいずれもコナン映画作品で初である。公開第8週目には第13作『漆黒の追跡者』の最終興行収入35億円を上回り、当時のコナン映画シリーズ最高興収記録を更新した[28][注 15]。最終興行収入は当時シリーズ最高となる36億3,000万円[1][2][3][4][5][6][7]、観客動員数も約300万人を記録した[30]。
テレビ放送
回数 |
番組名(放送枠名) |
放送形態 |
放送日 |
放送時間(JST) |
放送分数 |
平均世帯視聴率 |
備考
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1
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金曜ロードSHOW!
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2014年4月18日
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21:00-22:54
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114分
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13.6% [31]
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『異次元の狙撃手』の公開を記念してテレビ初放送された[32]。
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脚注
注釈
- ^ 監修として参加。
- ^ 原作者の青山は『相棒』シリーズのファンで、2011年元日に放送された同作のSeason9第10話「聖戦」で特別出演したほか、単行本第48巻の名探偵図鑑で主人公、杉下右京を紹介したことがある。
- ^ 「あたご」の主砲による砲撃シーンや普段は完全非公開のCICまでもが実写で映された。
- ^ 類似の例として『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』で声優を務め、その次作である『ドラえもん のび太と奇跡の島 〜アニマル アドベンチャー〜』で主題歌を担当した福山雅治が挙げられている。なお、福山は本シリーズには出演していないが、後に第22作『ゼロの執行人』の主題歌を担当している。
- ^ 自衛隊の施設、自衛艦等で起こった事件は警務隊が対処する。
- ^ 艦型はあたご型護衛艦。なお、現実世界で舞鶴港を母港としているのは同型艦の「あたご」である。また、艦番号であるDDG-170は、現実世界ではたちかぜ型護衛艦「さわかぜ」に与えられている。
- ^ 現実世界では本作品の公開以後、海上自衛隊においてイージス艦に対する女性自衛官の乗組みが始まった。また、2019年には大谷三穂一等海佐が、あたご型と同じイージス艦であるこんごう型護衛艦「みょうこう」の艦長に就任している。
- ^ 現実の電波時計は電波を受信する設計のため、時計から電波を発信することはない。つまり「電波時計を探知する」のはフィクションであり現実には不可能である。
- ^ 純粋な素手の格闘能力は、空手の達人である蘭の方がXより優っているが、Xは一本のロープすら武器として利用できる技術を持ち、総合的な戦闘力で蘭を上回る(週刊少年サンデー2013年21・22合併号の「コナンシークレットレポート」)。
- ^ 現実世界では、本作品公開以後、イージス艦に対する女性自衛官の乗組みが始まった。また2019年には、大谷三穂1等海佐が女性で初めてイージス艦「みょうこう」の艦長に就任している。
- ^ 現実の自衛隊の装備品にH&K USPはなく、実際に配備されている拳銃は、一部の特殊部隊を除き9mm拳銃である。
- ^ 蘭がスパイXとの闘いでイージス艦の甲板から海に落とされて生死の境をさまよう危機に見舞われていることを知ったコナンは、蘭の救出に躍起になるあまり多数の人の前で本来の新一としての素が出て「蘭」と呼称し続けてしまったが、この時はコナン自身も周囲も蘭の救助に夢中だったためにコナンが普段の「蘭姉ちゃん」ではなく呼び捨てをしていたことに気付かなかった。
- ^ a b ただし実際に海上保安部に存在するのは警備救難課であり、警備課や刑事課は存在しない。
- ^ 現在の自衛隊の装備品にリボルバー(回転式拳銃)はなく、実際に配備されている拳銃は、一部の特殊部隊を除き9mm拳銃である。
- ^ なお、翌年に公開された第18作『異次元の狙撃手』は本作の興収を上回っている[29]。
出典
関連項目
外部リンク
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